今回は、遺産分割提案事例・賃貸マンション経営をされていたケースというお話。
これは、先日、実際に、ご相談を頂いたケースである。
なお、ここでのアップに関しては、相談者の方から、アップについて、事前に、ご了承を頂いております。
私は、このような遺産分割は、リスクが高く、その方と同じような将来のご不安をお抱えの方はいらっしゃると思い、そのような方の、事前対応として、周知することが、社会のためだと思うので、是非、公開させてください、とお願いしたところ、二つ返事で、快くご了承くださいました。
まずは、本当にありがとうございます。
それでは、概要、経緯から。
なお、ご相談者は、不特定ですが、ご本人のプライバシーもあるので、金額、家族関係は、今回のケースを参考に、私がアレンジをしており、実際のものとは異なります。
まず、今回のケースは、お父さんに相続があり、法定相続人は、配偶者と子供1人。
つまり、お亡くなりなられた被相続人である、お父さんは、父、相続人である配偶者は、母、子供は、息子、と以下においては呼びたい。
次に、相続時の財産の概況はこの通り。
預貯金 1,000万円
建物 5,000万円 (居住用家屋 500万円 賃貸マンション 4,500万円)
土地 7,000万円 (財産評価上の評価減前の概算評価額)
借入 15,000万円
まず、相続時の純粋な財産は、プラスの資産 13,000万円 △ マイナスの資産 15,000万円 = △2,000万円 のため、相続税の申告は不要で、相続税も課されません。
ただ、そもそも疑問に思うのは、マンションを建てる必要が本当にあったのか、という話し。
つまり、マンションを建築した当時の財産の状況は、プラスの資産が、約8,000万円だったそうだから。
確かに、そのまま何もしなければ、数百万円単位の相続税が課せれただとうとは思うけど、億以上の負債を抱えるリスクと、数百万円の相続税を考えると、と私は思う。
それに、保険をつかって対策をすればよかったのに、とも思う。
ただ、今となっては、もうどうしようもないし、確かに、相続税はゼロになったからな。
ただ、一方、今回のご相談で明らかになったのは、息子夫婦の今後のマンション経営に対する不安である。
そもそも、ご相談のきっかけは、相続税の申告に関する質問だったのだけど、財産の概況を伺った段階で、申告義務がなく、相続税は不要であることが明らかになったため、その時点で、本来の私の責務は、終わったはず。
しかし、私のお世話になっている方のご紹介者で、大切にされてい方の相続だったので、より踏み込んだのだ。
それは、正に、息子さんご夫婦と同じで、今後のマンション経営と借入についてである。
なぜなら、私は、会計士として、以前、在籍していた監査法人において、銀行のクライアントを担当し、築年数が経過したマンションの当初のオーナーの返済が苦しくなっている事例を、何件も何件も見ていたからだ。
つまり、ある程度の確率で、新築マンションを、借入により建築した場合、長期的に苦しくなる可能性があることを理解しているからだ。
だから、大丈夫ですか?、ご不安はないですか?と。
すると、当然、不安だと。
そこで、税務的には、もう何もすることもなければ、何もする必要もないから、経営が苦しくなったときに備えて、選択肢をもつ遺産分割にしませんか?と私は、その場でいったのである。
つまり、私が、提案したことは、税務的に、全く関係のないことで、むしろ、リスクマネジメントである。
そもそも、当初、ご家族は、相続登記も面倒だし、費用もかかるから、法定相続分による相続ではなく、遺産、借入の全てを息子に相続させようと思われていたのである。
ただ、私は、それは止めたほうがいいと提案した。
そして、このように提案した。
それは、少なくても、可能であれば、マンションとマンションの土地と、借入の担保になっている不動産と借入は、母に、それ以外の財産は、息子に相続させた方がいい、と。
その心はこうだ。
つまり、今後、母がお亡くなりなられたタイミングで、母の相続を放棄することで、借入返済で苦しむリスクを回避するため、である。
ご理解いただけますか?
つまり、今回の父の相続で、全ての資産と借入を、息子が相続した場合には、経営が苦しくなって、返済で苦しくなっても、返し続けるか、自己破産するしか選択肢はなくなるわけだけど、マンションに関連する資産負債を、一旦、母に経由させることで、本来はあまり好ましくないことかもしれないけど、その家族の今後のために、関連する資産、負債、特に、負債を放棄するオプションを持った方がいいですよ、と私は提案したのである。
いいでしょうか?
税務ではなく、民法の世界においては、相続は、放棄という選択肢があります。
また、限定承認という選択肢もあります。
もちろん、今後、永続的に、マンション経営が順調にいけばいいでしょう。
しかし、必ず大丈夫と考えられるでしょうか。
また、幸い、建築後数年の今は満室のようですが、5年後、10年後は安心でしょうか。
だから、今回は、お母様には、大変、恐縮ですが、幸い、お母さんがご健在で、その相続にて、万が一、その後の経営にリスクを感じるのであれば、放棄などの選択をすることで、借入を精算できる機会があったことから、そうしたほうがよろしいのでは、と私は提案したのである。
相談者の方は、今後、検討します、おっしゃいました。
私は、是非、そうしていただきたいです。
また、仮に、そのようにして頂いたとして、まだ、受け継いできた財産について、相続放棄をした場合でも、より多く守るための対策もあるので、相続後に、いま一度、ご相談頂きたいと思います。
いかがでしょうか?
賃貸マンション等を経営されている皆様にお役に立てば幸甚だ。
また、自分がそうだといいたいわけではないけれど、事業者、経営者において、持つべきものは、思慮深い助言者、ではないだろうか。
私は、今後も、そのような存在でありたい。
あと、安易に、借入で、賃貸マンション等を建築してはいけないと、私は思う。
なぜなら、上記の通り、不幸な顛末を数多くしっているから。
目先の相続税回避のために、後世が借入返済で苦しんでいいわけがない。
今回の事案は、相続の順番がよかったことが救いで、相続関係人の関係次第では、このような選択肢もなかったかもしれない。
あとは、なぜ、借入対策として保険に加入していなかったのか、ということだろうか。
部分最適では、全体最適の視点、つまり、バランス感覚が重要だと思う。
最後に、改めて、ご相談者の方に感謝である。
きっと、この記事を見て、救われる方がいると思います。
いや、必ずいらっしゃると思います。
本当に、ありがとうございます。
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税理士・公認会計士
金平 剛
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