個人的なことだが、私は、起業における資金調達のサポートを得意としていたり、コンサルティングを行っていたりする関係上、起業における経営の相談を受ける機会が多い。
そんな起業に関する相談を、会計士、税理士である私に相談してくる相談者の方は、同時に、起業後の会計についても、お願いしたいとおっしゃるケースが多く、起業相談があれば、相談者に起業していただいて、そのまま弊所会計事務所のクライアントになっていただければ、私としては、ありがたいが、起業相談を受けた時に、私が必ず伝えることは、この事業内容で、この事業計画で、本当に起業していいですか?ということである。
話しは変わるが、夢や理想を追い求めることは、素敵なことだと、私も思う。
しかし、資本主義社会の現代において、資本的豊かさの伴わない起業ほどつらいものはないことを、私はこの仕事を通じて理解している。
だから、起業時こそ冷静は判断が必要であり、起業する業種やポジショニング、戦略が実は大変重要だと思うのである。
私は、起業相談の際には、必ず、事業内容等のヒアリングを行い、簡単なシュミレーションを行った上で、甘い計画だと思った場合には、やんわりと甘くないですか?という投げかけをする。
もちろん、その投げかけに耳を貸すことなく、そのまま、進まれるケースもあり、結果的に、成功するかもしれない。
しかし、投資は、ギャンブルではないから、宝くじであたった余剰資金が沢山あるといったケースを除き、投資リスクは最小化するべきだと思う。
中でも、販売単価が低いビジネスでの起業は、本当にリスキーだと思うので、特殊要因がない限り、最初のビジネスとしては、やるべきではないと思う。
例えば、その代表例は、カフェである。
そもそも、販売単価の低いビジネスというのは、販売数量を確保することで、利益を出すモデルであるところ、カフェは、席数を確保しても、どうしても長いされる可能性が高く、繁忙時価帯に、販売数量が増やしづらいことが明らかである。
つまり、カフェというビジネスモデルは、大企業が合理的に経営するか、カフェにおいては、何か高額なものを販売して収益性を高めるか、固定費が激安等といった条件が整わないと、利益の上限が低いビジネスであることを理解しなければならない。
実際、カフェがなくなるケースというのは、少なくない。
カフェに限らず、販売単価が低いビジネスでの起業は、相当慎重にしなければならない。
ただ、夢や理想を諦めろと言っているわけではない。
例えば、好きなことは、副業的にやればいいと思うし、本業的にやるのであれば、収益源となるビジネスを先に安定させた上で、好きなことをビジネスとして実施すればいいと思うし、実際に、そのように伝えることもある。
事業には、それぞれの目的があると思うが、私は、前提条件として、ある程度、稼げる、利益が出せることだと思うし、自分ができることの延長線上に拘らず、稼げる、利益が出せる業種、ポジショニングから逆算的に選択肢を絞り、選択することが重要だと思う。
金のなる木であるビジネスがあれば、余裕があれば、好きなことも事業にできる可能性はある。
しかし、好きなことで充分な利益を出せなければ、好きなことを続けることもできなくなる可能性がある。
世の中には、安易な起業のための事業計画セミナーなどがあるが、事業計画作成は重要だけど、現実的な前提のもと事業計画を作成しなければ、危険な投資になる可能性がある。
事業というのは、十分な利益を安定的に稼ぐことが最低条件であって、そのためには、それが実現できる仕事を選ぶ戦略的思考、選択が、最も重要だと思う。
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