個人事業のための、損をしないための決算、申告上の留意点というお話 決算編 その4


今回は、個人事業のための、損をしないための決算、申告上の留意点というお話 その4。


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では、さっそく。

その1 青色申告者の純損失の繰越控除

これは、申告にも関する部分であるが、ここで。

そもそも、純損失とは、簡単に言えば、事業所得が、赤字だったことを意味する。

また、青色申告とは、期限内に、青色申告の承認申請を出して、要件に合致した経理、決算、申告をしている場合の申告をいう。

そして、青色申告の場合、純損失は、翌年の所得から、控除できる仕組みを、純損失の繰越控除、という。

ここで、税金とは、所得×税率、で計算されることから、前年以前の純損失を繰越控除できる場合には、控除した方が、節税になることは明らかだ。

そのため、赤字決算はよくないけれど、経営実態として、赤字であるならば、赤字決算にした方がいい。

この点、融資を受けている方においては、赤字決算だと、金融機関から何かを言われる可能性があるので、赤字にはしない方がいいと思われるかたもいる。

しかし、例えば、開業初年度、や、臨時的な赤字決算であれば、金融機関も、仕方がない赤字だなと、考えてくれるので、そのような場合には、赤字決算にすることを、それほど気にする必要もない。

そうであるにもかかわらず、そのような不要な心配から、経費計上を渋って、赤字決算を免れれば、翌期以降のせっかくの節税の機会を逃してしまうため、よくないということになる。

開業当初、仕方のない損失計上等による赤字決算を、恐れる必要はない。

そんな心配をされるくらいなら、堂々と赤字決算を組んで、翌期以降、節税をしたほうが、余程いい、と私は思う。

その2 個人財源から支出した経費の計上もれはないか

特に、開業間もない方におかれては、この点を、気にされる方がいて、場合によっては、経費に計上されていないケースもある。

つまり、事業の現金や預金から支払った事業に関係する経費については、当然、経費として計上するものの、事業主個人のプライベートな現金や預金、さらには、カードから支払った事業に関係する支出については、経費に計上できないのではないだろうか?ということで、計上を躊躇されるケース。

そんな躊躇は不要である。

つまり、経費かどうかは事業に関係するかどうかによって判断すればいいのであって、事業主個人の財源から負担した経費であっても、事業の経費として計上してもいいのである。

仮に、そのように負担したのであれば、会計上は、

○○費(経費) ×円 / 店主借(事業主借) ×円

と処理すれば足りる。

つまり、逆を言えば、例え、財源が、事業の現金、預金であったとしても、事業に関係のない支出であれば、それは、事業所得の計算上の経費にはならないということになるので、ご留意頂きたい。

是非、これを機会に、事業主個人の預金やカードの支出記録をみて、経費になりそうなもののもれはないのか、ご確認頂きたい。

その3 開業費の計上

これも、漏らしている方が意外と多い。

つまり、開業前に発生した事業に関係する経費について、経費として処理していないケースである。

そもそも、開業費とは、開業準備期間中に要した開業のための支出、と簡単に表現できる。

そのような開業費は、開業後の事業所得の計算上、経費に計上してもいい。

より厳密には、開業費、とく繰延資産に計上する。

その上で、開業費を、償却する(要は、経費化する会計処理のことと考えて頂きたい。)わけだが、その償却自体は、任意となっている。

つまり、開業初年度において、開業費の全額を償却してもいいし、開業2年目以降に、ご自由に償却してもいいということに、開業費はなっている。

上記の純損失とも関係するが、2年目以降に黒字転換が明らかである場合には、開業費の一部を2年目以降に繰り越して、償却を忘れる等のミスを防ぐためには、個人的には、開業費は、開業初年度に、全額、償却することが合理的だと思う。

その4 減価償却資産の償却方法の変更

決算時には、必ず、減価償却費の計算をされていると思うが、この減価償却の方法について、実は、複数あるのはご存知だろうか?

そして、代表的で、一般的な方法として、定額法、と、定率法、がある。

そして、多くの個人事業の方は、定額法を採用されていると思うが、その理由は、個人事業の場合の減価償却資産の法定償却方法は、定額法になっているからである。

ここで、法定償却方法、とは、納税者が、償却方法の変更の手続きをしない場合に、税法が適用することを求めている償却方法のことである。

つまり、期限内に、償却方法の変更の手続をしておけば、個人事業の場合でも、多くの減価償却資産について、定率法を採用できるのである。

では、定額法と、定率法において、何が違うのかというと、早期に、減価償却費を計上できる金額が異なるということである。

つまり、定率法の方が、定額法よりも、より早く多くの減価償却費を計上することができるのである。

この点、逆に言うと、定率法の方が、定額法よりも、耐用年数後半においては、減価償却費の計上金額は少なくなることになるのであるが。

つまり、経費の計上できる金額のタイミングが、早いか遅いかの問題であって、耐用年数を通じて、減価償却費として計上できる総額は、いずれの方法でも、変わらない。

しかしながら、早期に減価償却費を多く計上されたいという方は、期限内に、所定の手続きをされて、定率法へと変更されることも、一種の節税効果を早める方法と言える。

ただし、建物に関しては、定額法しか採用できないし、一旦、過去に、定額法を採用した減価償却資産について、定率法への変更が認められない場合もあるので、ご留意頂きたい。

また、変更の期限にはご留意頂きたい。

その5 中古資産の耐用年数の特例の適用

これも知らない方が多い。(ちなみに、税理士は、当然しっていることだが。)

つまり、一定の中古資産については、耐用年数について、法定耐用年数よりも、短く設定できるのである。

そして、耐用年数を短く設定できるということは、より早期に、減価償却費と多く計上できるということになる。

なお、中古資産の耐用年数の計算については、国税庁のHPの方が、説明が正確なので、そちらに譲りたい。

No.5404 中古資産の耐用年数

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